旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 窓の外を眺めているうち、景色は次第に移り変わって沿岸エリアに入る。
 到着したのは埠頭の端で、車の中からライトアップされた橋とその奥側に夜の帳が下りた街の夜景が見えた。
 それまでの緊張も忘れ、私は「わぁ」と思わず浮かれた声を漏らしてしまう。日曜の夜という事情もあるのかもしれないけれど、そもそも穴場のようで、人の姿はさして多くなかった。

「降りて少し歩くか?」
「はい!」

 食事の間よりもずっと弾んだ、はしゃいでいる子供みたいな声で返事をしてしまう。
 車を降り、綺麗に整備された広い歩道をふたり並んで進んでいく。やがて橋がさっきより間近に見え始め、私の口からは非日常に呑み込まれたような溜息が零れた。

「すごいです。私、この辺りってあまり来なくて……綺麗ですね」
「そうだな。訊きたいことがあって、家よりこういう場所のほうがいいかと思った」

 景色に見惚れ、一瞬、言葉の意味を拾い遅れた。
 訊きたいこと――なんだろう。訊き返そうと振り返った先で、まっすぐな視線に射抜かれてしまってぎくりとする。

「どうして急に離婚したいなんて言い出した?」
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