旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 自分は異性との交際に不向きだ、と割り切ってからは息がしやすくなった。
 恋人がいようがいまいが、結婚していようがしていまいが、職務で結果を出せば周囲もそれなりに黙る。だからこそひたすら仕事に邁進してきたし、煩わしいすべてを振り切って職務に向き合ってきたつもりだ。

(……〝煩わしい〟か)

 苦い気分になる。そんな考え方では、相手が離れていくのも当然だ。
 薫子も、もしかしたら自分のそういう内面をなにか感じ取ったから離れようとしているのかも、と思えば一層気が滅入る。

「まぁなんつうか、どの子にも誠実であろうとはしてたけど、お前自身は別に誰のことも好きじゃなかったんじゃねえか? 言っとくけど俺は〝愛〟の話をしてるんだぞ、今」

 わざわざ顔を引き締めてから最後のひと言を口にした同僚を、胡乱な目で眺めてしまう。
 愛……そんな話題をよく照れもせず口にできるものだ、と呆れが滲む。だが織田原のこういう面は自分にはない部分で、つい眩しく感じてしまうのも事実だ。

「……好き、というのがよく分からない」
「うんまぁそれは見てればなんとなく分かるわ。なのに皆にそれぞれきちんと応えようとしてたのは、まぁ単にお前が真面目だからなんだろ……けどなぁ」
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