旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 言葉尻からどことなく責めるようなニュアンスを感じ取ってしまうのは、それが織田原による意図的なものだからなのか、あるいは単に自分の感覚の問題か。
 対面に座る織田原の顔を、急にうまく見ていられなくなる。

「相手にしてみりゃそもそも不誠実ではあっただろうな。好きな男に義理的な誠実心だけで応えられてたら、そりゃ皆〝思ってたんと違う〟ってなる」

 ふう、とひと息ついてから、織田原はそれまでの硬い声をわずかに和らげた。

「けどお前、この一年でかなり変わったよ。煙草やめたのも奥さんのためだろ」
「……銘柄ひとつ知らなそうなお嬢様だぞ。嫌がられるようなことは極力避けたかっただけだ」
「ふん、そうかよ」

 話は完全に織田原のペースで続く。
 それでいい。相談を持ちかけたのは自分だ。だが、苦い顔も苦い内心も全部悟られているようで、とにかく居心地が悪い。

「お前が結婚記念日忘れてたとき、正直あんな焦ると思わなかったんだわ俺。なんであんなに慌てた?」
「……普通だ、あのくらい」
「いいや違うね。他のタイミングでいくらでも取り返せる。少なくともお前ならそういうふうに考えると思ってたよ、俺は」

 まっすぐに目を向けてくる織田原を直視できず、露骨に俯いてしまう。
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