旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「……思ってたのと違ったんだ」
「なにが」
「妻が」
視線を落としたきりで零した声は、自分の想像よりもずっと掠れていたし、それに弱々しくもあった。
例えば、薫子が仕事を続けるとは思っていなかった。辞めると信じて疑わなかったからこそ家事の外注も継続したのに、そのプランは彼女自身の目で見直されて久しい。
こちらの気を引きたくてやっているのでは、と結婚当初こそ意地の悪い考えを巡らせる日もあった。だが結局、この一年、彼女が恩着せがましい態度を取ることは一度だってなかった。
お見合いの日に提示した『期待をしないでほしい』という約束を、薫子は愚直なまでに守ってくれている。
「考えられない」
自分との結婚は、楽をしたいから選んだんじゃないのか。
働かなくても家事をしなくてもいい、お嬢様らしい生活を続けられるから選んだんじゃなかったのか。
思い描いていた〝お嬢様〟のイメージから、彼女は懸け離れている。
おかしいと薄々感じてはいたが、気づきたくはなかった。気づいたら期待してしまうからだ。この人は今までの誰とも違う、と。
期待してから突き放されたら立ち直れなくなる。いや、それ以前の問題だ。
自分には期待をするなと伝えておいて、こちらから一方的に期待を寄せるというのはあまりにも不誠実だ。
「なにが」
「妻が」
視線を落としたきりで零した声は、自分の想像よりもずっと掠れていたし、それに弱々しくもあった。
例えば、薫子が仕事を続けるとは思っていなかった。辞めると信じて疑わなかったからこそ家事の外注も継続したのに、そのプランは彼女自身の目で見直されて久しい。
こちらの気を引きたくてやっているのでは、と結婚当初こそ意地の悪い考えを巡らせる日もあった。だが結局、この一年、彼女が恩着せがましい態度を取ることは一度だってなかった。
お見合いの日に提示した『期待をしないでほしい』という約束を、薫子は愚直なまでに守ってくれている。
「考えられない」
自分との結婚は、楽をしたいから選んだんじゃないのか。
働かなくても家事をしなくてもいい、お嬢様らしい生活を続けられるから選んだんじゃなかったのか。
思い描いていた〝お嬢様〟のイメージから、彼女は懸け離れている。
おかしいと薄々感じてはいたが、気づきたくはなかった。気づいたら期待してしまうからだ。この人は今までの誰とも違う、と。
期待してから突き放されたら立ち直れなくなる。いや、それ以前の問題だ。
自分には期待をするなと伝えておいて、こちらから一方的に期待を寄せるというのはあまりにも不誠実だ。