旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
『私が相手の方に求めるのは、私に対して誠実であってほしいということくらいです』

 見合いの日、薫子はそう言った。
 むしろ利害が一致していて都合が良いとさえ考えていた。だがいつからか、自分こそがあの日の彼女の言葉に縋りついていたらしい。

 自分が誠実であり続ければ、いつかはもっと寄り添えるのでは。
 無意識のまま、いつしかそんな夢まで思い描くようになっていた。

「誠実であろうとすることしかできない俺の、それだけをほしがってくれた人だから、どうしても応えたかった」

 溜息が零れた。論理的に話を組み立てられない。うまく頭が回っていない証拠だ。
 話を聞いている間、織田原は一度も口を挟まなかった。途中からは相槌すら聞こえなくなり、そして今、ひと通り話し終えて落ちた沈黙を織田原の溜息が緩く裂く。

「だから離婚届突きつけられても必死こいて足掻いてる……ってことならお前、それはもう愛だろ」

 織田原は、普段の飄々とした態度を毛ほども感じさせない真剣な顔をしていた。
 気圧された自分の口元から、は、と思わず声が漏れる。

「……愛?」
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