宇宙で、推しとウエディング!?
「シュリさん。あの松の木のマツボックリが、十秒後に落ちます。そこで、スタートです」
「そ、そんなことわかるの? オッケー、十秒後ね!」
 ポピーの家の目前に生える、大きな松の木。
 その枝先に、今にも落ちそうなマツボックリが、ゆらゆらとゆれている。
 サカエくんが、カウントダウンを始めた。
「ご……よん……さん……に……いち……ゼロ!」
 スタートダッシュは案の定、ポピーが少し早かったみたい。
 わたしは、少し前を走るポピーを追いかける形になっている。
 だけど、人間のわたしだって、負けないんだからね。
 とは言っても……ポピーってば、パンプスっぽい足パーツにしてるハズなのに、ものすごくはやいじゃん。じょじょに、間がひらいていっちゃってる。
 わたしも懸命に追いかけるけど、なかなか距離が縮まらない。
 体育の成績は、いいほうなんだけどなあ。
 スカイスクーターに乗ってるサカエくんが、見てくれてるんだもん。
 カッコ悪いトコは、見せられない!
 わたしは、はいていたスニーカーとソックスを走りながら、脱ぎ捨てた。
 これで、走りやすくなった。
「ポピー、待て~っ!」
 ちょっとづつ、ちょっとづつ、距離をちぢめる。
 ポピーの背中が、近くなってくる。
 やった、並んだ!
 このまま、目的の星マークのところまで、一気に行っちゃおう!
 あれ、待てよ。
 星マークのところって……どこだっけっ?
 大きな建物って言ってたけど、一向にそれらしいものは、見えてこない。
 やばい、今までポピーの背中を着いてきてただけだったから、迷わず走って来れたけど、いざ自分が前になると、一気に頭が真っ白。
 地図見ないと、道わかんないじゃん、わたし!
「すみません、シュリさん。お先に!」
 パンプスなのに、さっそうと走っていく、ポピー。
 ううっ! あきらめないんだから!
 追いかけてるだけじゃ、らちが明かない。
 わたしは一回立ち止まって、ポケットに入れていた地図を、かさかさと開く。
 サカエくんが、フウ、と息をつきながら、スクーターを引いてくる。
「ちゃんと地図、覚えてなかったのか?」
「み、見たよね! でも、走ってるうちに真っ白になったよね」
「まったく、大丈夫か?」
 呆れられちゃった……。
 わたしに花嫁探しを頼んだのが、間違いだったって、思われちゃったかな。
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