宇宙で、推しとウエディング!?
「出発前に、ポピーの情報をスカイスクーターに転送しておいただけだ」
 そう言えば、家を出る前にサカエくんが長いケーブルを、ポピーの頭につないで何かしてたけど、こういうことだったの?
 ちなみに、わたしの現在地にも赤いアイコンが光っている。
「シュリが身にまとっている、桜の木の粘液の成分を登録してある。その成分を探知して、位置情報に加えているんだ」
「そんな風にも使えるの……っ? 便利だなあ」
「どう考えても、お前は方向オンチのようだな。目的地の場所を教えるぐらいのハンデの追加は、問題ないだろう」
 え? わたしって、方向オンチだったの?
 サカエくんに言われて、初めて気づく、わたし。
「ううっ……ここから逆転するんだからね!」
 悔しまぎれにそう叫ぶと、、サカエくんがクスクスと笑いだした。
 あの、サカエくんが、声に出して、笑ってる……!
 サカエくんのすごく優しい笑顔に、わたしの心臓が、ピョンと飛びはね、顔に熱が集まってくる。
「この状況で、逆転のことをまだ考えているのか。すごい、としかいいようがないな、お前は」
 サカエくんが目を細めて、わたしを見つめてる。
 こんな、キレイでやさしい顔を見られたなんて……。
 わたし、今日のこと、ゼッタイ一生忘れない!
「あああの、ちち地球人をなめないでよね! ものすごく…し、しぶといんだから、わたしは!」
「ふふ……そうみたいだな」
 サカエくんの笑顔は、少なくともわたしを救うね。
 走りだせば、今なら、アメリカのスポーツカーだって追いこせる気がする!
 そして、心が踊りだしそうな気持ちを押さえつけながら、風のように走り続けて、やっとお城の真ん前まできた。
 天まで届きそうなほど大きなお城を見上げ、ボンヤリと、掃除が大変そうだな、なんて思った。
「もう、ポピーがいるんだよね、このお城に。急がなきゃ」
「そうだが……。一応、言っておくと、ここは城じゃない」
 スクーターをおり、これまた大きなトビラの前にとめながら、サカエくんが言った。
「え? だってさっき、お城だって」
「見ためはな。正確には、ここは研究所として使われていた施設だ。アンドロイド開発のために」
 アンドロイド開発、って。
 それじゃあ、この星のアンドロイドたちは、ここで生まれたの?
 なんで、ポピーはこの研究所を、ゴールにしてきたんだろう……。
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