宇宙で、推しとウエディング!?
 ポピーは顔の部分パーツが少なくて、表情は読み取りにくいはずなのに、今どんな気持ちなのか、ハッキリとわかる。
 あのお城の研究所をおとずれたから、博士との思い出がよみがえってきて、つらいんだよね。
 そして、その記憶が消えていってる事実を自覚してしまって、また、悲しいんだよね。
「……今は、一人にしてほしいんです。ごめんなさい、シュリさん」
 今にも、泣き出しそうな声で、ポピーは言った。
 でも、ごめんね。
 こんな状態のポピーを、ほっとけるわけないよ。
 わたしは、ポピーのそばへかけよっていく。
「ポピー。ごめんね。よけいなお世話かも知れないけど……でも」
「近づかないでください!」
 ポピーが、抵抗するように、川の水をバシャン! と、わたしに向けてかけてくる。
「この星の人間が、次から次にアンドロイド製造が盛んで、給与のいい星にスカウトされ、どんどんこの星の人間はいなくなっていきました」
 ポピーの声は、泣いていて、とても苦しそうだ。
「同時に、アンドロイドたちはつれていけないからと、この星に置いて行かれました。向こうの星の、さらにいい素材で、新しいアンドロイドを作るからだと、言われました。私たちは、他の星で、力仕事をするために開発されたと聞いていたのに……」
「そんな……」
「でも、シエスタ博士だけは、どんなに良い条件を言われても、アンドロイドたちが寂しがるからと、この星に残ってくれていた。私は……博士が作っていた、最後のアンドロイドです。でも、次第にアンドロイド製造のお金も資源もなくなっていって……わたしの顔パーツをつくる部品は、もうほとんどありませんでした。さらに記憶をとどめておくほうの部品にも、欠陥が出てきた。それでも、直すに直せなかったのです」
「そうだったんだ……」
「最後に、博士は言いました」
 ――ポピー。本当に、すまない。顔パーツか、記憶パーツ。どちらかひとつしか、もう作ることができない。……どちらが、イイ?
「私は、博士のことを忘れたくありませんでした。なので、記憶を選びました。そして、博士は自らが大切にしていた、懐中時計や顕微鏡、羅針盤を分解して、私の星形の記憶パーツを作ってくださった。あのときは、あんなに嬉しかったのに……私は……私は……!」
「ポピー……」
 わたしは、ポピーのからだを強くだきしめた。
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