次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「いい匂いがする……」

 恐らく、使っている柔軟剤の香りか何かだろう。こうして彼の布団に包まっていると、抱き締められているみたいだ。

 ――余計に眠れないかも……。

 何度も口づけられた唇を指で撫で、悩ましげなため息を繰り返す。

 恋を覚えたての高校生ではないのに。
 一ヶ月ほど前まで、私にもフィアンセがいたというのに。

 恋する楽しみを知ったばかりの少女みたいに浮かれてしまう。もっと、彼に触れて欲しいなと思ってしまう。
 きっと彼ではなかったら。私は新たな関係を結ぶことをためらっただろう。
 信じている人に裏切られたばかりなのだ。当分、恋愛なんてしなくてもいいと思ったはず。

 だけど、達成さんだから。幼馴染の彼だったから、少しだけ心のハードルが低かったのかもしれない。

 むしろ、優しく溶かされて、絆されている。恋しいと、思ってしまっている。

「早く、寝なくちゃなのに……」

 私は暫く布団の中で呻くと、ごろんごろんと何度も寝返りを打った。
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