次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「それじゃあ、そろそろ帰るよ」
「帰っちゃうの?」
「さすがに泊まりの想定じゃないよ」

 啄むようなキスを何度かしたあとで、彼が帰り支度を始める。
 泊まっていってくれてもよかったのに、と自分らしからぬ大胆な気持ちに駆られて、自分でも驚いた。
 さっき、いっぱい彼に触られたから、その影響もあるかもしれない。

「今日はごちそうさまでした。また、来るよ」
「うん」

 立ち上がった彼を玄関まで見送る。
 部屋から玄関までが一瞬で、この狭い部屋を恨めしく思った。
 もっと広い部屋なら、彼と一緒にいる時間が五秒でも十秒でも長くなったのに。

「それじゃあ、また明日」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

 当たり前にキスが降ってきて受け止める。
 私は彼の姿が見えなくなるまで、扉を閉めずに見送った。やがて彼が見えなくなって、パタンと扉を閉める。
 私はその場でずるずるとしゃがみ込むと、両手で顔を覆った。

「……心臓止まりそう」

 終始、ドキドキしっぱなしで心臓が壊れそうだった。今もうるさいぐらいに鳴っている。
 付き合ってまだちょっとしか経っていないのにこれでは先が思いやられそうだ。

「今日、楽しかったな……」

 ハァ、とため息をつき、さっきのことを思い出す。
 私は叫びたくなる衝動を抑えると、ベッドにダイブして、暫く足をバタバタと動かした。
< 132 / 150 >

この作品をシェア

pagetop