次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 お客様からの依頼は難しいものではなく、ダイニングテーブルの椅子をもう一脚追加して欲しいとのことだった。
 その依頼はすぐ解決し、お客様の部屋を出る。
 エレベーターホールに向かい、エレベーターに乗り込んだところで、ふと彼のことが気になった。

 このまま帰ってもいいけれど、二十五階はこの一つ上だ。公私混同はよくないと思いつつも、二十五階のボタンを押し、彼の部屋へ向かう。

 部屋の前に辿り着いたとき、やっぱりやめたほうが……という気持ちがもたげてきて、私は暫く扉の前で逡巡した。

 ――でも、ここまで来たんだもの。どうせなら、ちょっとだけでも顔が見たい……。

 そんな気持ちがむくりと湧いてきて、チャイムを押す。だけど、部屋の奥から返事はなかった。

「外に出てるのかな……?」

 そう思いつつも、もう一度、チャイムを押す。
 やや時間を置いて部屋の奥が騒がしくなり、扉が開いた。

「あっ、達成さん。柚希です。ごめんなさい、急に来てしまって。でも、連絡がないから心配で……」

 そう言って、顔を上げたときだった。彼が青白い顔でこちらを見下ろしていた。
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