次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 さあ、行きましょう、と言って、彼が私の手を引く。混乱する私をよそに、彼は会場を飛び出すと笑いながら走った。

「た、達成さん! あんなこと言って、本当にいいの!?」
「もちろん」

 いまだ興奮さめやらぬまま、エレベーターに押し込まれ、二十五階へ向かう。乗っていたお客様が次々と降りていき、二人きりになった瞬間、ぎゅうっと抱き締められた。

「柚希、泣かないで。僕との結婚、嫌でしたか?」
「嫌、じゃないっ、でも」

 大切なパーティーを台無しにしたのだ。このあとのことを思うと恐ろしい。自分に対する非難よりも、達成さんの方にいく非難の方が怖かった。

「婚約者のことは気にしないで。さっきも言ったけど、そもそも決める権利は俺にある。このホテルの経営権も、今後の未来を決めるのも、愛する人を決めるのも俺の自由だ。絶対に柚希のことは幸せにするし、ホテルのことも守るよ。そのために、ここ最近、紫苑寺グループの他に提携できるところはないか、他に選択肢はないか調べて、コネクションを作ってきたんだ」

 軽く唇が触れたのと同時にエレベーターが止まる。
 お手をどうぞ、と差し出された手をぎゅっと握った。
 部屋まで行く少しの距離すらもどかしくて、駆け足になる。

 私も達成さんも雪崩込むように部屋に入ると、もう一度キスをした。
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