次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 ――やっぱり、目を引くわよね……。

 予想していたことだけれど、圧倒的美貌を持つ彼に、お客様の目も釘付けだった。
 おまけに、自分と入れ替わりでコンシェルジュカウンターに入った先輩が、私のことを睨んでいる。
 もし、私も彼女の立場で特別な事情を抱えていなかったら、同じように達成さんの隣に立つ女性のことを羨ましく思ったに違いない。それほどまでに、彼には人の目を引きつける魅力があった。

「ロビーに設置しているソファーは、今年の春に入れ替えました。周年記念に合わせる話もありましたが、それ以上にソファーの毛がへたってしまい、あまり見栄えがよくないとのことで」
「なるほど。では、テーブルは? 変えていませんよね。少々、このソファーには合っていないように思います」
「それは私も気になっていました」
「フロントがあるロビーはホテルの顔です。これを機会に変えてもいいかもしれません。老舗ならではの落ち着きを保ちつつも、高級感は出したい」

 その他、タペストリーを百周年用に変えることなどを彼がバインダーに記載していく。

 一通り一般客室を見終えたあとは二十階にある入浴施設と、その横のジムをチェックした。
 残るはその上のVIPエリアだ。ここからは内装ががらりと変わり、エレベーターを降りた瞬間から絨毯の色が変わる。
 ロビーにはアラベスク模様の描かれた絨毯が、一般客室には少し濃い目のベージュの絨毯が、VIPエリアからは深めの赤い絨毯に変わる。等間隔に並ぶ廊下の照明も、電球カバーが花びらの形になっていた。
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