次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「どこにでもあるバーだなって思うんです。コンセプトがないと言いますか……。もっとテーマを決めて、内装や提供する料理を絞ってもよいのかと」
「なるほど、凡庸だと」
「そうなりますね……。あとは……」

 これも言うべきか迷う。
 聞かれていないことをつらつらと話すのは、時として失礼にあたる。だけど、彼はわざわざ私を連れてきたのだ。VIPエリアのお客様を担当する私を。
 ということは、もっと踏み込んだ意見を求めているに違いない。私は気になるところをひとつひとつ思い浮かべた。

「エレベーター前のロビーですが、バーが近くにあるため、あまり機能していません。もっと別のことに利用するか、潔くソファーなどを撤去してもよろしいかと。あとは、ジムが二十階にも存在します。ほとんどのお客様が二十階のジムを利用したあと、近くの大浴場に行かれるので、二十六階のジムは不要かと。それと、休憩室ですが、あまり稼働しているところを見たことがありません。いっそのことリラクゼーションサービスを取り入れたらよいのではないでしょうか。もしくはジムエリアと繋げて何か体験を売り込む、とか」

 ここまで一息に喋って、ハッと顔を上げる。
 明らかに言い過ぎたと思ったけれど、達成さんは私が言ったことをすべてバインダーに書き留めていた。

「なるほど。ジムや休憩室の稼働状況は、常にこのエリアに来ている人でないと見抜けません。別途、稼働率は取りますが改善の余地がありそうです。やはり、あなたを選んでよかった」
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