次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 達成さんに腕を引かれ、人気のいないラウンジまで連れて行かれる。私は人がいないことを確認すると、達成さんの方に振り返った。

「もう、たっちゃん! 公私混同は……!」
「その呼び方はいただけませんね。それにほら」

 ちりんとベルの音が鳴って、エレベーターが開く。
 出てきたのはお客様とともにやってきた他のコンシェルジュだった。

「周りに聞かれてしまいますよ?」
「い、いまさらでしょう……」

 やってきたエレベーターに乗り込み、一階を押す。そのとき、業務連絡用のインカムから、私を指名する声が聞こえてきた。

「至急、二十四階の二四一三号室へ。いつもの板倉様がお待ちです」
「……分かりました」

 インカムをオンにし、呼びかけに返事をする。

 私はすぐにエレベーターを降りると、上へ行くエレベーターに乗り換えて二十四階を目指した。
 達成さんは、どうしたんです? と言いつつも、私のあとをついてくる。

「VIPルームのお客様からの呼び出しです。私は対応してきますので、達成さんはどうぞお昼休憩を取ってきてくだ「僕も行きます」」
「へ?」

 私が言い切るよりも早く言葉を被せられて、呆けた声が出る。
 ダメです、と突っぱねることもできたけれど、彼のことだ。存外、押しに強いところがあるので、きっと何を言ってもついてきてしまうだろう。

 私はハァ……とため息をつくと、達成さんに詰め寄った。

「分かりました。ついてきていいですが、お客様からは見えない位置で控えていてください」
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