次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 やっぱり、周りからは異常に見られているのだろうな、と思うと自然と吐き出す息が重たくなった。

 このまま暗い顔をし続けるわけにもいかないと、地下へ向かう道すがら無理やり口角を引き上げ、リネン担当者からブランケットを受け取る。
 エレベーターで客室に上がろうとするも、ちょうど清掃担当が機材を持って上がるところだったらしく、エレベーター前にはちょっとした列ができていた。

 ――今日はとことんツイてないかも……。

 また口から出そうになるため息を飲み込んで、奥にある階段へ向かう。
 すると、その目の前で達成さんと鉢合わせた。

「お疲れ様です、宮園さん」
「お、お疲れ様です……」

 つい、声が萎んでしまう。
 さっき先輩に怒られた理由のひとつでもある彼と鉢合わせてしまって、少し気まずかった。

「どうしました? あまり元気がないようですが」
「そんなことはないですよ。ただ……」
「ただ?」
「あまり、私と一緒にいないほうがいいかもしれません」
「なぜです?」
「だって、私は婚約破棄されたばかりなんですよ?」

 階段の踊り場まで進めていた足を止め、達成さんのほうに振り返る。

 いくら事情があるとはいえ、婚約破棄された瞬間から恋人を作る女なんて、客観的に見れば軽い人だと思われてしまう。先輩が私に放った言葉には、かなりの棘が含まれていたけれど、あながちその指摘も間違いではなかった。
 もし私が外側の人間だったなら。先輩ほどではなくても、似たような感想を抱いたかもしれない。

「少なくともあまり恋人らしいことはしないほうが……きゃっ!」

 トンと軽く肩を押されて、壁際まで追い詰められる。
 先輩はものすごい剣幕で私を見下ろしていた。
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