次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「誰かに何か言われましたか?」
「い、いえ。そんなことは……」
「では、僕の恋人であることが恥ずかしいと?」
「恥ずかしくないです。むしろ、達成さんのほうが私と噂されて恥ずかしいんじゃ……」
「僕は恥ずかしくありません。だから、二度とそのようなことは口にしないで」

 いいですね、と念を押すように唇を指先で押される。
 私はコクコクと頷いた。

「分かればいいです。それと、明日は委員会の会議があるのでお忘れなきよう」
「……はい」
「それと、昨日は行けませんでしたが、ランチもいずれ」

 言いたいことだけを告げて、達成さんが先に階段を上がっていく。
 私はというと、達成さんに触れられたところが熱くて仕方なかった。心なしか、頬も赤くなってる気がする。

 手の甲で頬の熱を奪うように押し付けていると、下の階にいたスタッフと目が合った。

「あっ……」

 ふいっと顔を逸らされてスタッフが歩いて行く。

 いまの瞬間を見られてしまったかもしれない。
 先ほど先輩に釘を刺されたばかりなのに、これでは社会人として失格だ。
 私はパシンと頬を叩くと、唇をきゅっと引き結び、心を入れ替えて階段を上がった。
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