次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「大変お待たせしました。コンシェルジュの宮園です」

 コンコンと扉もノックし、名前を告げる。
 すると、部屋の奥が騒がしくなり、数秒とかからず扉が開いた。私は姿勢を正したまま深々とお辞儀をし、相手の出方を待つ。

「みやその……? もしかしてお前、あの新人か!」

 ぐいっと胸ぐらを掴まれて、無理やり顔を上げさせられる。案の定、小野瀬様からアルコールの匂いがした。

「クソッ! 新人は寄越すなって言ってるだろう!」
「申し訳ございません。本日は私が小野瀬様のご要望をお聞きさますので……!」
「お前みたいなのに務まるか!」

 強かに酔っているのだろう。怒りのボルテージが上がっているらしく、乱暴に床へと叩きつけられる。
 急に手を離されたこともあり、為す術もなく尻もちをついた。

「きゃっ!」
「気色悪い悲鳴を出すな!」
「申し訳ございません」
「お前、コンシェルジュのスカーフもないじゃないか」
「ただいま、クリーニングに出しておりまして」
「はぁ? そんなチャラチャラした首元で仕事するな!」

 見下されたまま怒鳴ったかと思えば、再び胸ぐらを掴まれる。
 男は酒臭い息を吐き出すと、ぐいぐいと襟を引っ張った。耐久力のないボタンが弾け飛んで、さらに首元が晒される。
 それを見て何を思ったのか、男が、へっ、と笑った。

「コンシェルジュは何でも要望を聞くんだよなぁ?」
「お、小野瀬様……?」
「なら、そういうサービスもしてもらおうか」
「ダメです! 離してください!」
「うるせぇ!」

 再び床に倒されて、そのままずるずると腕を引かれる。あまりの痛みと恐怖で涙が滲みそうになったときだった。
 扉が大きく開いた。
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