次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「柚希のことが好き。だから大きくなったら絶対迎えに行くから」

 俺は彼女から返事を聞くのが怖くて、言い逃げるようにして祖父に連れられて海外へ行った。

 ロイヤル・ローズは五つの拠点があり、東京、大阪、ロサンゼルス、ニューヨーク、ラスベガスにホテルを構えている。
 曽祖父の時代から築き上げており、当然それを継ぐのは俺の父である"はずだった"。

 父は、早くに病で亡くなった。
 それが、引っ越した理由でもある。父は東京、大阪を管轄していたが、病に臥せたことで祖父がすべてを見ることになった。
 俺は早くから次期経営者になることが決定づけられ、父の死後、すぐに祖父によってアメリカに連れてこられた。

 それからの日々は目まぐるしく、語学や年次ごとの一般教育、それにプラスして早くからホテル経営について学ばされた。
 何度も逃げ出したいと思ったが、柚希を迎えに行くことだけを心の支えに努力した。

 あの日の約束は、ただの子どもの口約束ではない。本気で、彼女を迎えに行くつもりだった。

 だけど、一年、二年、十年と時間が過ぎていき、その約束も自分の中で薄れてしまった。
 自分でも、もう叶うことはないと思っていたのだ。

 そんなとき、ロイヤル・ローズ東京の社長に就任することが決まった。
 従業員リストで彼女の名前と写真を見たとき、息が止まりそうになった。

 ――彼女が、自分のホテルで働いている。

 薄れたはずの約束が、再び色濃く形を取り戻した瞬間だった。
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