次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 急に私の名前が出てきて、全員の視線がこちらに向く。達成さんはなぜか得意げに、その時のことを語りだした。

「彼女はこの会においては最年少でありながらとても優秀です。コンシェルジュはお客様を見ると同時に、ホテルのこともよく見ているのですね。VIPエリアの改修案に関しては彼女の意見がとても参考になりました」

 達成さんの言葉で、他部門の先輩スタッフたちが感心した、とでもいうような温かな目で私のことを見てくれる。
 だけど一部のスタッフ――特にフロントスタッフやコンシェルジュなど、よく関わりのあるスタッフに関しては、私に冷ややかな目を向けた。

「……ただの贔屓じゃない」

 ぽつりと、私のことを非難する声が近くから聞こえてきて、ひゅっと息を呑む。
 案の定というべきか、私と達成さんとの関係をよく思っていない人からの嫉妬で身が縮こまりそうになった。

「では、今日の会議は以上になりますが、ひとつだけ」

 ドン、と分厚いファイルをわざと机に叩きつけた達成さんが、鋭い視線を走らせる。その表情はあまりにも感情が抜け落ちていて、そのただならぬ様子に全員が息を呑んだ。

「ここのところ、くだらない嫌がらせのようなものがスタッフ間で起きていると聞きました。もし、私の目の前で何か起こったときは……しかるべき対処をしますのでそのつもりで」

 少なくとも、このホテルから閉め出します。という、強い言葉を投げつけられて、部屋の空気が凍る。
 恐ろしい発言をしたとうの本人はにっこりと笑顔を浮かべていた。

「ではみなさん、持ち場に戻るように」
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