次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 彼の一声で蜘蛛の子を散らすようにスタッフたちが部屋から出ていく。
 私も資料をまとめて部屋を出ようとしたときだった。突如、地面がうねって立っていられなくなった。

「……っ」

 ぐらりと体が傾いて、咄嗟に近くにあった机に手をつく。纏めていた資料が散らばって、まだ部屋に残っていた数人のスタッフが大丈夫? と声を掛けてくれた。

「お騒がせしてすみません。私は大丈夫です」

 私はそう言うと、気分が落ち着くまで暫く待っていようと思い、ゆっくり椅子に腰掛けた。

「大丈夫ですか? 宮園さん」

 最後まで部屋に残っていた達成さんに声を掛けられる。
 他のスタッフと同じように大丈夫だと伝えたものの、彼はムッとした表情で私を見下ろしていた。

「顔色がよくありません。かなり無理をしているのでは?」
「そんなことは……。まぁ、忙しくはありますけど。でも、このあとは帰るだけですし、それにフラついたのには理由があって……」

 言うべきか、言わないべきか悩んでいたときだった。
 静かな部屋にぐぅ、と大きなお腹の音が鳴って頬に熱が集まる。お腹を押さえるも、また大きな音が鳴った。

「…………」
「…………」
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