次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています


「それでは、また何かありましたら遠慮なくコンシェルジュにお申し付けください」

 深く礼をして、お客様の部屋を出た。
 本来、コンシェルジュに指名制というものはないけれど、VIPのお客様かつ常連のお客様になると、お互い顔見知りになっていく。
 常連のお客様には様々な方がいて、職種もバラエティに飛んでいる。本来、一介のコンシェルジュには知り得ないことだけれど、名前を調べれば有名企業の役員としてヒットすることもしばしばあった。
 そうでなくても、部屋に入ったときの様子で察してしまうことも多い。

 たとえば、物書きの方だと環境を変えるためにホテルを利用されることがある。そういった方の場合、デスクの様子であらかた分かってしまうものだ。
 ぽつりと締切が近くて……と零される方もいる。

 また、最近だと動画配信をしている方で、撮影のために利用される人もいる。そういうお客様も、部屋に入ると独特の機材が並んでいるため分かりやすい。

 みんな、様々な理由でVIPエリアを利用されているため、顔見知りのコンシェルジュの方が頼みやすいという心理が働くのだろう。
 だから、それぞれお気に入りのコンシェルジュを見つけて、その人がいればその人に、と依頼されるケースも多かった。
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