次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 ――私、期待してるの……?

 彼と恋人になれるかもしれないことを? 彼に愛されるかもしれないことを? 本物の愛を注いでもらえるかもしれないことを?

 そんなの、もう、好きと同義だ。

「柚希?」
「ご、ごめん……! いま、顔見ないで……!」
「それは無理な願いだな。ほら、もっとよく見せて」
「うぅ……」

 恋を自覚した瞬間の顔なんて見られたくない。
 それなのに、達成さんはニヤリと口角を上げると、火照った頬に手の甲を押しつけてきた。

「熱すぎ」
「もう、言わないで……!」

 じたばたと暴れて彼を押し返し、無理やり体を起こす。
 思えば、達成さんと一緒にいるとき、いつも心臓がうるさかった。今も痛いぐらいに脈打っている。
 きっと、自覚するよりももっと前から彼のことが好きだったんだ。

 ――だけど、自覚した瞬間から負けてるなんて笑える……。

 彼にはフィアンセがいる。どんなに彼が否定しても、なかなか覆ることはないだろう。周りは紫苑寺さんを推すに決まっている。
< 94 / 150 >

この作品をシェア

pagetop