愛とプライドとバベルの塔
そして、冷たい秋風が吹く十月。
わたしは今日も売場の仕事に喪中や年賀はがきの承りで駆け回っていた。
でも、今サイクルも段々と落ち着いてきていて、三階に三谷さんや阿久津さんが居てくれる時間が増えていた。
「小田桐さーん!年賀ー!」
南田さんの声だ。
わたしはクリスマスカードの準備をしていたのだが、「はーい!」と返事をし、喪中、年賀はがきの受付カウンターへ行こうとした。
すると、阿久津さんが駆け寄って来て「俺行くから大丈夫だよ。作業続けてて。」と言ってくださり、わたしは、「ありがとうございます!」とクリスマスカードの準備の続きをさせてもらうことが出来た。
そんな時、文房具売場の横にあるギフト売場から黒松さんというギフト売場で一番勤続年数が長い、お喋り好きなおばちゃんがやってきた。
「あら、小田桐ちゃん。」
「あ、黒松さん。お疲れ様です。」
「あのぉ、、、小田桐ちゃん、ちょっといいかい?」
小声で何だか意味深な言い方をする黒松さん。
わたしが「何ですか?」と言うと、黒松さんは「小田桐ちゃん、竹内主任と不倫してるんだって?」と言ってきたのだ。
はぁ?不倫?
わたしと竹内主任が?何でそんな話になってるの?
「竹内主任は奥さんいる人なんだからさぁ。不倫はやめときなさい。ね?」
「あ、いやいやいや!ちょっと待ってください。わたし、竹内主任と不倫なんてしてませんよ?」
「え、でも仲良いでしょ?」
「確かに仲は良いですし、HDの仕事を三谷さんや阿久津さんが忙しくて教えてもらえない時にお世話なりましたけど、そんな関係じゃないです。それ、どこからの情報なんですか?」
わたしがそう訊くと、黒松さんは周りをキョロキョロ見回したあと「内緒だよ?」と言い、それから「南田さんが言ってたの。もうみんなに噂広まっちゃってるよ?」と言ったのだ。
あぁ、、、やっぱり南田さんかぁ。
わたしは溜息をつき、何だか馬鹿馬鹿しくて笑えてきてしまったのだった。