愛とプライドとバベルの塔
蟹江課長に呼び出されて話したあの日から二日後のことだった。
わたしが休憩に行こうと、バックルームのロッカーからバッグを取り出している時に「あら、小田桐さん。おはよう。」と背筋がゾッとする声が聞こえてきた。
ふと横を見ると、そこには作り笑いを浮かべる南田さんが出勤して来たところだった。
「おはようございます。」
「蟹江課長と話したんですって?ごめんなさいね、不快な思いをさせちゃってたみたいで。」
思ってもいない上辺だけの言葉を言う南田さん。
わたしは「いえ、大丈夫です。」と冷静に返事をした。
「でもね、小田桐さん?あなたが何を言っても無駄よ?わたしに敵うはずないんだから。」
南田さんの言葉に、わたしは悔しさと、今まで"大丈夫"だと思ってきた我慢が溢れ出し、静かに涙を流してしまった。
すると、そんなわたしを見た南田さんは「あら!小田桐さんも女の子だったのね!可愛い!」と言い、勝ち誇ったような表情で売場に出る準備を始め、わたしは急いでロッカーを閉めると、休憩室へと向かったのだった。
最上階にある休憩室へ向かう為、泣きながら階段を上っていると、上から誰かが下りてくる足音が聞こえ、わたしは慌てて涙を拭いた。
「え、小田桐さん?どうしたの?」
その声に顔を上げると、下りて来たのは阿久津さんだった。
「何かあったの?!」
わたしの涙に気付き、慌てて駆け下りてくれた阿久津さん。
そして、わたしはさっき南田さんに言われた言葉を阿久津さんに話した。
すると、阿久津さんは「はぁ?!何だよそれ。課長、南田さんと何て話したんだ?俺、訊いて来る!」と言い、わたしの「あ!阿久津さん!」と言う制止を振り切り、階段を駆け上って行ってしまった。