愛とプライドとバベルの塔
「あぁ、話はもう通してある。だから、小田桐さん。君の代わりに来週から俺の知り合いを入社させることにしたよ。板谷さんという人だから、引き継ぎを頼むよ。」
「蟹江課長!それは勝手すぎます!南田さんの話だけで、そんな話を進めるなんて!」
「竹内くん、俺は課長だよ?君の上司だ。あんまり楯突くと、君も異動になるよ?」
蟹江課長が脅しのつもりで竹内主任にそう言うと、竹内主任は何の驚きも動揺もせず「上等ですよ。何なら、僕も小田桐さんと同じ店舗に異動させてください。小田桐さんは誰より仕事熱心で、誰よりも売場を動き回ってくれています。そんな彼女に俺は職務Ⅱの試験を受けさせてあげたいんです。彼女はまだ職務Ⅰなのに、職務Ⅲほどの仕事が出来ますよ?ただ口だけの南田さんと違って。」と言った。
すると、竹内主任が思った反応と違ったことに蟹江課長は焦り始め「冗談だよ!竹内くんは、俺の右手なんだから、異動なんてされたら困る!」と言い、それに対して竹内主任は「俺は小田桐さんに居なくなられたら困ります。あんなにグチャグチャだったステーショナリーの売場が今整ってるのは、小田桐さんの頑張りのおかげですよ?」とハッキリと言ってくれた。
「まぁ、、、それは認めるが、、、」
「小田桐さんはクラスシステムも打ち込めます。HFに大型家電や家具の承り出来る人いますか?いませんよね?18年いる南田さんすら出来ないんですよね?18年居て出来ないって、、、南田さんが言ってることと矛盾してるの分からないんですか?!」
竹内主任は、最後までわたしの異動を取り止めにしようと、蟹江課長に頼んでくれた。
しかし、南田さんを可愛がっている蟹江課長の考えが変わることはなく、わたしは途中で「竹内主任、、、もう大丈夫です。ありがとうございます。」と言うと、ソファーから立ち上がった。
そして、わたしは蟹江課長に向かい「蟹江課長は、今まで出会ってきた上司の中で一番最低な上司でした。あなたの下で働きたくありません。異動は、喜んでお受けします。」と言った。
「小田桐さん!」
竹内主任に呼び止められたが、わたしは涙を必死に堪え、竹内主任に深く一礼すると、面談室をあとにした。