愛とプライドとバベルの塔
わたしは何も言い返さず、涙を拭いて、顔をマスクで隠す為にロッカーを開け、マスクを取り出した。
すると、南田さんはわたしの横に来て、甘ったるい声でこう言った。
「わたしに、勝てるわけないでしょ?」
わたしはその言葉がズシンとみぞおちまで落ちた感覚に陥った。
どんなに頑張っても、所詮"御局"には敵わないんだ。
どんなに頑張っても、邪魔が入れば報われないんだ。
わたしは仕事に対してプライドを持って、まだ七ヵ月ほどではあるけど、この短期間で必死に努力を積み重ねてきた。
しかし、それはただの無駄だったんだ。
すると、一気にわたしの中で何かが崩れ落ち、感情が欠落してしまった。
何これ、、、
笑えない、泣けない、怒れない、、、
でも、仕事をしなきゃ。
わたしはマスクを装着すると、ロッカーを閉め、南田さんの横を通り、重たい扉を開けて売場に出ると、いつも通り売場の仕事をしながら、喪中、年賀はがきの承りをした。
ただ、いつもと違うのは、仕事が"楽しい"とか"楽しくない"とか何も感じなくなったこと。
そんなわたしの様子に気付いた高井さんが「どうしたの?何かあったのかい?」と心配してくれたが、わたしは作り笑いにもならない表情で「大丈夫です。」と答え、優しさで話し掛けてくれた高井さんにさえからも逃げてしまった。