愛とプライドとバベルの塔
そして11月に入り、サイクル売場が冬季になった為、閉鎖になり、サイクル売場の人たちが全員三階に上がってきて仕事を゙手伝ってくれるようになった。
HD担当の三谷さんと阿久津さんは勿論知っていたが、この八ヵ月間で同じ部署なのに初めましてだったのは、元飛行機整備士で年配の井野さん、まだ大学生の畑くんだった。
井野さんはお洒落でダンディな雰囲気があり、若い頃は絶対にモテたであろう顔立ちをしており、畑くんはポッチャリ体型だがハキハキとした学生くんだった。
それからまもなく、わたしの人事辞令が貼り出された。
『北店 HD ステーショナリー担当 小田桐栞菜を 西店 HF ダイニング担当に命ずる』
わたしは異動は覚悟はしていたものの、部署まで変わることは知らなかった。
しかも、因縁があるHFのダイニング担当だなんて、、、
わたしは、、、ステーショナリーの仕事が好きだった。
ステーショナリーの仕事を続けたかったのに、、、
すると、突然手に痛みを感じ、ふと自分の手のひらを見てみた。
「えっ、、、?」
痛みから気付いたのだが、わたしの両手は指が曲がらない程パンパンに腫れ上がっていたのだ。
え、何?どこにもぶつけてないよ?
こんな手じゃ、仕事出来ない、、、
そう思いながら、わたしは最上階の事務所から裏の階段で三階まで下りて行こうとした。
すると、後ろから「小田桐さん!」と、阿久津さんの声が聞こえ、わたしは足を止め振り向いた。
「辞令見た?」
「はい、見ました。」
「何あれ、、、マジで異動になんのかよ、、、しかも、HDじゃなくてHF?ふざけんなよな、あのクソ蟹ジジイ。」
そう言って阿久津さんがわたしの為に苛ついてくれている中、わたしは気の抜けた声で「阿久津さん、これ見てください。」と阿久津さんに腫れ上がった両手を見せた。
阿久津さんは、それを見ると「どうしたの?!」と驚いていた。
「分かりません。痛いなぁと思って見てみたら、指が曲がらないくらい腫れて痛くて。」
「これ、ヤバいよ!いつから?!」
「さっき気付きました。」
「主任に言いに行こう!」
阿久津さんはそう言い、バックルームに居るはずの竹内主任の元へ行く為、急いで階段を駆け下りて行ったのだった。