愛とプライドとバベルの塔

「小田桐さんは、こんなグチャグチャな惨状の売場をひとりきりで一生懸命変えようとしてくれてた。仕事熱心だし、仕事の覚えは早いし、忙しい中でHFから呼び出されても嫌な顔一つせずに必死に頑張ってるのを俺は見てきた。それを見てたのは、俺だけじゃない、他の部署の課長たちからも"良い子入ったね"って言われて、俺は鼻高々だった。そんな一生懸命な小田桐さんを見てたら、、、可愛く思えてきてしまったんだよ。」

竹内主任の言葉につい「え、、、」と心の声が漏れてしまうわたし。

竹内主任はゆっくりと顔を上げると、わたしの方を向き、切なくも優しく微笑んで見せた。

「もちろん、部下として"可愛い"と思っただけだ。愚痴を吐きながらも一生懸命仕事はやってくれるし、、、何よりね、俺はあの言葉を聞いて、小田桐さんにもっと仕事を覚えてもらいたい、職務Ⅱの試験を受けさせたいと思ったんだよ。」
「あの言葉、、、?」

わたしが呟くように言うと、竹内主任は「うん、、、いつだったか忘れたけど、まだサイクルが忙しい時期だったから、入社して一ヵ月くらいの時だったかな。小田桐さんが"三谷さんと阿久津さんがサイクルの仕事に専念できるように、三階はわたしが頑張ります!"って言ったんだよ。あの時、、、俺は感動したんだ。そんな風に仲間を思いやって仕事を頑張ろうとする人がいるのか、って。」と声を震わせながら言った。

「え、、、小田桐さんが?そんなこと、、、」

竹内主任の言葉に阿久津さんはそう呟いた。

「うん。だからこの件に関しては、俺が悪い。小田桐さん、、、本当に申し訳ない。」

竹内主任はそう言うと、腕に絡まっている南田さんん振り払い、わたしに向け深々と頭を下げた。

「ちょ、ちょっと主任やめてくださいよ。頭上げてください!」
「いや、、、本当に、小田桐さんには申し訳ないことをした。ただ、、、仕事を頑張ってくれていただけだったのに、、、」

竹内主任が深々と頭を下げるバックルーム内は静まり返り、自分を責める竹内主任を見て、わたしは涙が溢れてきてしまった。

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