愛とプライドとバベルの塔
「あ、居た。小田桐さん。」
すると、後ろから声がして、振り返るとそこには阿久津さんが立っていた。
「阿久津さん、、、」
阿久津さんはわたしのそばまで来るとしゃがみ込み、わたしと同じ目線になると、微笑みながら「おかえり。」と言ってくれた。
"おかえり"、、、
今まで、そんなに気にしたことがない言葉だったけど、その言葉がこんなにも嬉しいものなのだと、わたしは初めて気付いた。
「阿久津さん、、、竹内主任が、、、」
わたしがそう言うと、阿久津さんはわたしの肩に手を置き「自分を責めてるの?」と訊いた。
わたしはその言葉に頷き俯くと、阿久津さんは「竹内主任の異動は小田桐さんのせいじゃない。主任が自分で決めた事だよ。それよりも、無いものを事実とされて、異動させられる小田桐さんと、自分で異動を決意した竹内主任の方が被害者なんだからね?」と言ってくれた。
「それから、、、ありがとう。」
阿久津さんの言葉にわたしは「えっ?」とふと顔を上げた。
「三谷さんと俺の負担を減らそうと、頑張ってくれてたんでしょ?本当にありがとう。三谷さんも言ってたけど、小田桐さんが来てくれてから凄く助かるって、異動されるのが困るって言って、蟹江課長に小田桐さんの異動をなくしてくださいって、頼みに行ってたくらいなんだから。」
「え、三谷さんが?」
「そうだよ。だから、それくらい三谷さんと俺は小田桐さんに助けられてた。そんな小田桐さんにこんな仕打ちをする、あの蟹ジジイとブリっ子ババアが許せない。」
阿久津さんはそう言うと「だから、小田桐さんは自分を責める必要はない。竹内主任だって、小田桐さんの頑張りを見て成長させようとしていただけで、それを勝手に嫉妬した奴が悪いんだから。」と、わたしの頭をポンポンッと優しくタッチした。