キスしたら、彼の本音がうるさい。
◇神谷瑛翔◇
あの日から、月菜からの連絡はない。
LINEのトーク画面を開いても、変わらずそこに彼女の名前があるだけ。
それだけのことが、こんなにも胸を締めつけるなんて思わなかった。
何度もメッセージを書いては、消した。
「ごめん」も、「会いたい」も、「あのときは」も――全部打ちかけては、
送信ボタンの前で、指が止まった。
“言葉にした瞬間、軽くなってしまいそうで”
“こんなものじゃ足りないって、自分でも分かってたから”
だから何も言えなかった。
でも何も言わなかったせいで、彼女の“好き”は、
返されることなく、どこにも行き場がなかった。
本当は、伝えたかった。
何度も、ずっと、胸の中で繰り返してた。
──好きだ。
笑ってる顔も、怒った顔も、困ったように眉を下げる仕草も。
声も、間の取り方も、うつむく癖も。
全部、ぜんぶ。目が合うたびに、心が動いてた。
それなのに、俺は。
なぜか言えなかった。“好きだ”って、たったそれだけの言葉を。
駅前のパン屋の前を、通り過ぎる。
ドアに手をかける勇気も出なくて、ガラス越しに中をのぞくこともできなかった。
ただ通り過ぎるしかなかった。
それが今の俺と彼女の“距離”そのもののようで、悔しくて仕方なかった。
帰宅して、ベッドに倒れ込む。
スマホを握ったまま、天井を見つめていた。
画面には、未送信のメッセージがいくつも並んでいる。
言いたいことが、こんなに溢れてるのに
口に出そうとすると、全部が嘘みたいに軽くなる気がして、何も送れなかった。
月菜──。
君のことが、まだ──いや、ずっと、好きだ。
誰よりも、大事で、手放したくなかった。
だけど俺は、言葉を出さなかった。
言葉を出さないという選択で、君を遠ざけてしまった。
あのとき、“好き”と返すだけでよかったのに。
それだけで、まだ君の隣にいられたのかもしれないのに。
街の光が静かに滲んで見える。
あんなに近くにいた君が、
今ではもう、遠くの誰かみたいだった。
あの日から、月菜からの連絡はない。
LINEのトーク画面を開いても、変わらずそこに彼女の名前があるだけ。
それだけのことが、こんなにも胸を締めつけるなんて思わなかった。
何度もメッセージを書いては、消した。
「ごめん」も、「会いたい」も、「あのときは」も――全部打ちかけては、
送信ボタンの前で、指が止まった。
“言葉にした瞬間、軽くなってしまいそうで”
“こんなものじゃ足りないって、自分でも分かってたから”
だから何も言えなかった。
でも何も言わなかったせいで、彼女の“好き”は、
返されることなく、どこにも行き場がなかった。
本当は、伝えたかった。
何度も、ずっと、胸の中で繰り返してた。
──好きだ。
笑ってる顔も、怒った顔も、困ったように眉を下げる仕草も。
声も、間の取り方も、うつむく癖も。
全部、ぜんぶ。目が合うたびに、心が動いてた。
それなのに、俺は。
なぜか言えなかった。“好きだ”って、たったそれだけの言葉を。
駅前のパン屋の前を、通り過ぎる。
ドアに手をかける勇気も出なくて、ガラス越しに中をのぞくこともできなかった。
ただ通り過ぎるしかなかった。
それが今の俺と彼女の“距離”そのもののようで、悔しくて仕方なかった。
帰宅して、ベッドに倒れ込む。
スマホを握ったまま、天井を見つめていた。
画面には、未送信のメッセージがいくつも並んでいる。
言いたいことが、こんなに溢れてるのに
口に出そうとすると、全部が嘘みたいに軽くなる気がして、何も送れなかった。
月菜──。
君のことが、まだ──いや、ずっと、好きだ。
誰よりも、大事で、手放したくなかった。
だけど俺は、言葉を出さなかった。
言葉を出さないという選択で、君を遠ざけてしまった。
あのとき、“好き”と返すだけでよかったのに。
それだけで、まだ君の隣にいられたのかもしれないのに。
街の光が静かに滲んで見える。
あんなに近くにいた君が、
今ではもう、遠くの誰かみたいだった。