キスしたら、彼の本音がうるさい。
キスの余韻が、まだ体の奥に残っていた。
触れ合った唇の温度。
彼の手のひらのぬくもり。
全部が、心臓の奥で静かに燃えている。
だけど、瑛翔はふいに小さく笑って、言った。
「……お腹、すいた」
「えっ……」
返す言葉が間に合わなくて、思わず笑ってしまった。
この空気が、嬉しかった。
特別じゃなくていい、こうやって笑い合える日常がいちばん好きだ。
「なにか、作ろっか?」
「……うん」
彼の部屋のキッチン。何度も立った場所。
でも今日は、いつもより広く感じた。
「冷蔵庫、勝手に開けていい?」
「うん。なんも入ってないけどな」
「ん……あ、卵あるじゃん。あと、ウィンナーと、キャベツ……」
「炒め物コースだね」
「うん。手際よくいくよ」
髪をひとつに結びながらエプロンを借りると、
瑛翔が横で包丁とまな板を差し出してくれる。
「キャベツは任せて。細切りが得意なの」
「じゃあ俺、卵溶いとく」
カチャカチャと器と箸の音。
ふたりだけの小さな台所に、あたたかな生活音が満ちていく。
「月菜、手、そんなに速かったっけ?」
「前は、見られると緊張してたから……今日は平気」
「へえ……じゃあ、今日は見てもいい?」
「もう見てるじゃん」
「うん。でも、もっとちゃんと見ていたい」
顔を上げたら、彼が笑っていた。
まっすぐで、まるで“好き”って言ってるみたいな目で。
顔が熱くなって、慌てて視線をフライパンに落とす。
「……あ、卵がちょっと焦げたかも」
「気のせいだよ。うまそう」
「フォローになってない!」
そんなやりとりが、なんだか嬉しくて、何度も笑ってしまう。
笑うたび、彼が“今を大事にしよう”としてくれてるのが伝わってきた。
簡単な炒め物と、焼いた卵。
ふたり並んで食べるだけで、何倍も美味しく感じた。
「前に食べたときより、味付け濃い?」
「うん。でも、今日のが好きかも」
「ほんと?」
「うん。……君がいると、何でも美味しい」
ふたりで作った、ありふれた夜ごはん。
でもそれが、思っていた以上に愛おしく感じた。
──隣にいるだけで、好きになる。
そんな夜だった。
触れ合った唇の温度。
彼の手のひらのぬくもり。
全部が、心臓の奥で静かに燃えている。
だけど、瑛翔はふいに小さく笑って、言った。
「……お腹、すいた」
「えっ……」
返す言葉が間に合わなくて、思わず笑ってしまった。
この空気が、嬉しかった。
特別じゃなくていい、こうやって笑い合える日常がいちばん好きだ。
「なにか、作ろっか?」
「……うん」
彼の部屋のキッチン。何度も立った場所。
でも今日は、いつもより広く感じた。
「冷蔵庫、勝手に開けていい?」
「うん。なんも入ってないけどな」
「ん……あ、卵あるじゃん。あと、ウィンナーと、キャベツ……」
「炒め物コースだね」
「うん。手際よくいくよ」
髪をひとつに結びながらエプロンを借りると、
瑛翔が横で包丁とまな板を差し出してくれる。
「キャベツは任せて。細切りが得意なの」
「じゃあ俺、卵溶いとく」
カチャカチャと器と箸の音。
ふたりだけの小さな台所に、あたたかな生活音が満ちていく。
「月菜、手、そんなに速かったっけ?」
「前は、見られると緊張してたから……今日は平気」
「へえ……じゃあ、今日は見てもいい?」
「もう見てるじゃん」
「うん。でも、もっとちゃんと見ていたい」
顔を上げたら、彼が笑っていた。
まっすぐで、まるで“好き”って言ってるみたいな目で。
顔が熱くなって、慌てて視線をフライパンに落とす。
「……あ、卵がちょっと焦げたかも」
「気のせいだよ。うまそう」
「フォローになってない!」
そんなやりとりが、なんだか嬉しくて、何度も笑ってしまう。
笑うたび、彼が“今を大事にしよう”としてくれてるのが伝わってきた。
簡単な炒め物と、焼いた卵。
ふたり並んで食べるだけで、何倍も美味しく感じた。
「前に食べたときより、味付け濃い?」
「うん。でも、今日のが好きかも」
「ほんと?」
「うん。……君がいると、何でも美味しい」
ふたりで作った、ありふれた夜ごはん。
でもそれが、思っていた以上に愛おしく感じた。
──隣にいるだけで、好きになる。
そんな夜だった。