夜の研究所探検
「それで? 何があったの?」
研究室に戻ってくるなり、アルトに訊いた。
「ぼくも分かんない。ふたつ目の角を曲がった直後だったんだけど、すぐ横のドアが開いて、女の人が出てきた。それで、その人、ぼくを見て突然叫んだんだ」
「なるほど」
誰もいないと思っていたところで、ホログラムの少年に出会したら、誰だって悲鳴を上げるだろう。
(それにしても……)
「アルトはお化けに会いたかっただけなのに、まさかそのお化けになっちゃっただなんて……」
「ええっ、ぼくはお化けだと思われたの⁉︎」
こみ上げてくる笑いを堪え切れない。
「ふっ、ふふふ……」
「先生、ひどいよ……ぷぷっ……あっはっは」
当初の計画からは、ずいぶんとかけ離れた探検になってしまった。
それでもアルトのいい笑顔を見ることができたから、一応成功といってもいいだろう。
ずいぶん笑ったところで、ふいにアルトが静かになった。
どうやらバッテリー切れのようだ。
(今日のところはここまで、だね)
「それじゃあ、今日はすごく疲れたと思うから、しっかり休んでおいて」
「うん、先生も……また……明日ね……」
──帰り際、会議室のほうにも寄ってみることにした。
けれど、私の足音以外は物音ひとつせず、誰の姿も見当たらなかった。
(きっと見間違いか何か、ということで片付けられたんだ。よかった)
こうして私は、ほくほくした気持ちで帰宅の途についた──