夜の研究所探検
満足するまで見学したアルトは、ようやくこちらを振り向いた。
「おもしろかった。先生、連れてきてくれてありがとう!」
「どういたしまして。それじゃあ、次は……」
どこに行こうか考えようとしたときだった。
アルトが上体を横に傾け、私の後方を覗き見た。
「先生、あっちのほうには何があるの?」
「ああ、あっちはね……」
私も振り返る。
「廊下に沿って会議室が並んでるんだよ。突き当たりはトイレだね」
答えながら歩き出すと、アルトもぴったり私の横をついてきた。
「行き止まりってこと?」
「ううん。ここからだと見えにくいけど、トイレの手前で左に曲がれるよ。会議室を囲むように、廊下が“ロ”の字になってるんだ」
私は左を指差した。
「で、ぐるっと一周すると、ここに戻ってくるんだよ」
アルトがワクワクしているのが分かった。
「行ってみたい?」
「うん。ぼく、ひとりで行ってみたーい!」
「えっ、アルトひとりで?」
「ダメ?」
思いがけないお願いに、戸惑った。
(どうしたものかな……)