二人で恋を始めませんか?
「茉莉花……」

ウェディングソングが流れる中、近づいて来た茉莉花に優樹は言葉を失う。

「綺麗だ、茉莉花」
「優くんも、素敵」

恐らく同じように強引に着替えさせられたのだろう。
優樹は白いタキシード姿で、髪型もフォーマルに整えられていた。

微笑む二人を皆が写真に撮る。

「茉莉花の『優くん』が白瀬本部長だと知った時は驚いたけどねー。こうして見るとすごくお似合い」

そんな声が聞こえてきて、茉莉花はギクリとする。
沙和が明るく「だよねー」と笑っていた。

乾杯をしたあと、小澤と沙和が編集した動画が上映される。
互いに知らない、入社したての頃の茉莉花と優樹。
同期の仲間と楽しそうに飲んでいる様子が流れた。

「えっ、優くん若い!」
「まあ、10年前だしな。おっ、茉莉花、可愛いな」
「なんだか、恥ずかしい」

うつむき加減でおとなしそうな22歳の茉莉花。
小澤をそっと遠くから見ているだけの、淡い恋心を抱いていたあの頃の自分。

でも今は違う。
心から好きな人と結ばれ、生き生きと仕事にも打ち込んでいる。
優樹のおかげで成長出来た。
優樹のおかげで幸せになれた。
今の自分の方が、以前よりも好きだ。

スクリーンに映し出された映像がキラキラと輝きながら終わる。
と思いきや、急にパッと画面が切り替わった。

『白瀬さん、清水さん、結婚おめでとう!』

笑顔で手を振っているのは、鎌倉のカフェのオーナーと店長。

「えっ、いつの間に?」

驚く二人に、沙和が得意げに言う。

「お二人の身辺調査はバッチリよ。色んな人にお祝いコメント送ってもらったんだー。ほら!」

続いて現れたのは、アプリ開発の担当者、内野と戸田。
更には桜貝のアクセサリーショップのスタッフ。
そしてなんと、オーベルジュのフロントスタッフや、レストランのシェフも。

誰もが笑顔で『お似合いのお二人。お幸せに』と祝福してくれていた。

「もう、本当にびっくり。ありがとう、沙和ちゃん」
「どういたしまして。ほら、次はケーキ入刀よ。お二人、前にどうぞ」

優樹が茉莉花に手を差し伸べ、二人で歩み出る。
テーブルに置かれた真っ白なウェディングケーキに、二人で手を重ねてナイフを入れた。

「はい、目線こっちね。笑ってー」

パシャパシャと写真を撮られて、茉莉花は優樹と照れたように見つめ合う。

「はい、そのままチュー!」
「しません!」

真顔で沙和に答えたとき、小澤が生後9ヶ月の娘を抱いて現れた。
そう言えば姿が見えないと思っていたが、どうやら保育園に迎えに行っていたらしい。
初対面の優樹は赤ちゃんを腕に抱き、なんとも言えない柔らかい表情を浮かべる。
それを見て、茉莉花も早く赤ちゃんがほしくなった。
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