私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
「貝原さんはユキに憤っていたから
あんな風に言っただけよ。あの時
隣の部屋で聞いていたんだ。
でも出ていけなかった。行けばユキを
もっと困らせると思ったから」

ユキの話を聞きながら幸はまた静かに
涙を流していた。

ユキが見つかるまでは決して
泣かなかった。

そしてユキが自分の元には帰ってこないと
分かった時に涙が枯れはてるまで泣いた。

「幸、俺の側にいてくれるよな。
俺を許してくれないか。幸がいいと言えば
すぐに婚姻届けを出しに行こう。
記憶が戻った時に一番後悔したのが、
婚姻届けを早く出しておかなかった事なんだ
そうすれば裕美にも幸が妻だと言えたし
すぐに諦めてもらえたと思うんだ。
恵子さんの49日の法事が終われば幸の所に
帰れた。あの古いけど思い出がいっぱい
詰まったマンションに、最後にあそこに
行ったときに幸の作ったぬいぐるみを
見つけたんだ」

そういってバックから小さな
ぬいぐるみを出した。

「いつも幸に会いたくなったらこいつに
話しかけていたんだ。」

「馬鹿ね、ユキ」

そういって幸はユキに抱き着いた。

ユキは天にも昇る気持ちだった。

やっとこの腕に幸を抱ける。
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