私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
「走れ!ビーナス!」

その音量に周りの人も三崎もユキも
びっくりしたが、風に乗って幸の声が
ビーナスに届いたのか、ビーナスが突然
スピードを上げ始めた。

あっという間に先頭馬に追いつくとゴール
寸前で頭半分程差を付けて駆け抜けた。

三崎もユキも幸も呆然とした。

ビーナスは全然マークもついていなかった
のだから、馬券が舞っている。

やっと気を持ち直した3人は“やったあ~”と
雄たけびを挙げたのは誰かも
わからなかったが3人でがっしりと
抱き合った。

三崎は馬主席で皆に祝福の握手攻めに
あっている。

幸は涙が止まらない。

ユキはまだ呆然として幸を胸に抱いていた。

実はユキはその日の財布に入れてきた6万
全部ビーナスに単勝で賭けたのだ。

果たしていくらになったのかもわからない。

きっとすごい金額だ。

これは確定申告しないといけないので
困ったと頭を抱えたい心境になってきた。

三崎は幸とユキにパドックに一緒に
行こうと言った。

ぜひビーナスを祝ってあげてほしいと
言ったのだ。

写真撮影やらインタビューやら優勝の
セレモニーが終わったらやっと
ビーナスに会えた。
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