鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
義理の祖母には毎回と言っていいほど、絢乃と名前を呼び間違えられるそうだ。

お嬢様育ちで大企業の社長を務める絢乃と、庶民中の庶民の自分が比較されているような気分で落ち込んでしまうという。

きっと、いや絶対に三条家のみんなに悪気はない。

美沙もわかっているから、嫌だと言えずに我慢していたのではないだろうか。

(それはつらかったわよね。私の存在そのものが、美沙さんを傷つけていたんだ……)

美沙がすすり泣きながら訴える。

「絢乃さんより好かれる日は来ない気がして、不安で」

「そう思わせてごめんなさい……」

「私、母子家庭で育ったんです。奨学金で進学して去年返済し終えたばかりで、結構苦労してきたと思ってたのに、絢乃さんの方が苦労人だって和志が」

(お兄ちゃん、余計なことを……)

従兄は大変な時こそ笑い飛ばして前進するタイプだ。

きっと美沙を元気づけようとして、絢乃に比べたら大したことないと言ったのだろう。

けれども美沙にとっては励ましにならず、また絢乃と比較されたと思って傷ついたようだ。

「絢乃さんの生い立ち、聞きました。たしかに私より大変そうで、苦労でも負けてる。なにひとつ勝てるものがないんです。この家の家族の愛情も。和志の妹なら、愛情で負けても仕方ないと思えるんです。でも、ただの従妹なのに。私がいなくても、絢乃さんさえいればいいんじゃないかって……こんなふうに思いたくないのに。もう、嫌だ」

お兄ちゃんと呼ばれるのが嫌な理由がわかった。

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