鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
美沙が立ち上がり、和志の胸に顔を埋めた。

しっかりと抱きしめた和志が、絢乃に視線を向けて眉尻を下げた。

「絢乃もごめ――」

咄嗟に首を強く横に振って、自分に謝罪してはダメだと目で訴えた。

和志は完全に美沙の味方でないといけない。

「和志さん」

呼び方を変えると、戸惑った顔をされた。

「私、これからかなり忙しくなるの。次にお邪魔するのは年始の挨拶になりそう。伯母さんたちにうまく言ってもらえると助かるわ」

ハンドバッグから出したのは、この家の合鍵だ。

返すべきだと思い調理台に置くと、和志が寂しそうな顔をした。

「わかった」

美沙も気づいたようで、和志の腕を解いてこちらを向いた。

「あの、焦ってしまっただけで絢乃さんを追い出すつもりはないんです。これからも来てください」

「ありがとう。優しいのね。でも忙しいと言うのは本当よ。体に気をつけて、元気な赤ちゃんを産んでください」

微笑みかけてからすぐに台所を出た。

リビングのドアをノックして開け、ソファに座ってテレビを見ている伯父と伯母、祖母に声をかける。

「ごめんなさい。急な仕事が入って、これでお暇するわ」

「来たばかりなのに?」

伯母が残念そうな顔で立ち上がる。

「仕方ないさ。会社経営とはそういうものだ」

伯父が慰めるように伯母に言った。

「絢乃ちゃん、いつでも帰っておいで。待ってるよ」

祖母の優しい声を聞いた時、涙腺が緩みそうになったが、歯を食いしばって耐えた。

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