鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ふたつとも自分では見つけられないものだから。

(それに、なぜかとても懐かしい)

四葉のクローバーを指先でクルクル回して楽しんでいると、昴が目を細める。

「絢乃さん、夕食はたこ焼きにしない?」

(慰めのつもり?)

三条家での団らんを失ったので、その代わりにふたりでも賑やかに楽しめるたこ焼きを提案されたのかと思った。

気遣ってもらわなければならないほど弱くないのにと思ったが、よく考えると昴は三条家の食卓を知らない。

深読みしすぎたと反省して口角を上げた。

「いいわね」

「食材を買って帰ろう。今日はたこ以外になにを入れようか?」

「チョコレート。あれ、気に入ったわ」

「だろ? 俺の味覚がおかしくないようで安心した」

「それはどうかしら。私の味覚はあてにならないわよ。食事に興味がないの。煩わしい空腹を満たすために食べているだけだから」

人生損していると言いたげな目で見られたが、同情はいらない。

気の毒そうな顔の昴に少し笑って言う。

「でも、あなたと作ったたこ焼きは楽しかった。またやりたいと思っていたのよ。食材を買って帰りましょう。今日は準備から私も一緒にするわ」

新しいエプロンを着て彼とキッチンに立っているところを想像すると、自然と笑みが浮かぶ。

昴も笑顔になり、隣に並んで歩き出した。

(楽に息ができるわ)

三条家からの帰路がひとりだったなら、息が苦しいほど落ち込んでいたことだろう。

迎えに来てくれた昴の思いやりに感謝した。

(優しい人ね)

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