鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
歩くリズムに合わせて片手の甲が時々触れ合う。

気づかれないように鼓動を高めつつ、今までより彼との距離が近いと感じていた。



* * *



七月最後の木曜日、早めに帰宅した昴はひとりで夕食をとったあと自室で筋トレをしている。

どの筋肉をどれくらい鍛えればちょうどいいのか計算して行っているので、かなり時間がかかる。

マシン三台と鉄アレイを駆使して五セット終えると二時間が経っており、首筋に汗が流れた。

(気持ちいいな)

腹筋台に腰かけてタオルで汗を拭き、スポーツドリンクで喉を潤す。

心も体もスッキリとして気分がいい。

昴にとって筋トレは筋力と体形維持のためだけでなく、リフレッシュの意味もあった。

仕事やプライベートで問題を抱えている時もこうしてトレーニングをすれば心が軽くなり、別方向からのアプローチを思いつくこともある。

問題とは捉えていないが、今前進させたいと思っているのは絢乃との夫婦関係だ。

(心の距離は結構、近づいている気がするんだが)

今は週に二、三度一緒にキッチンに立ち、料理をして向かい合って食事している。

他愛ない話をし、冗談を言い、彼女が笑ってくれると心が弾んだ。

よそよそしかった結婚当初に比べると、かなりの前進だろう。

悩みまで聞かせてくれたのだから。

三条家での美沙との一件を思い出した。

もしかすると泣いているかもしれないと思い三条家の門前で待っていたが、やはりというべきか気丈だった。

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