鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
だがここのところ、柔らかい自然な笑みをたまに見せてくれるようになった。

三条家からの帰路、たこ焼きの話をしている時や、押し花にした四葉のクローバーを見せてくれた時もそうだった。

心を開いてくれそうな予感がして嬉しく思うのだ。

筋トレのあとはシャワーを浴びて、髪を拭きながらリビングに入った。

時刻は間もなく二十三時になるが、絢乃はまだ帰宅していない。

静かな広いリビングが少し寂しく感じる。

会食ではなく、今日中に片づけたい仕事がたくさんあるという理由で、今夜は遅くなるというメールを夕方にもらっていた。

(そろそろ帰ってくるよな?)

水を飲みながら彼女の帰宅を気にしていると、私用の携帯が鳴った。

絢乃かと思いソファ前のローテーブルに手を伸ばしたが、和志からの電話だった。

「どうした?」

『今、少しいい?』

「ああ」

『絢乃は?』

「まだ帰ってない」

『そうか』

いつもより声のトーンが低く、切り出し方を迷っているような雰囲気だ。

絢乃が心配でかけてきたのだろう。

ということは、絢乃本人とは直接連絡を取っていないようだ。

ソファの横に立ったまま話をする。

「事情は聞いてるよ。結婚おめでとう。子供もできたんだってな」

『ああ。そうなんだけど……絢乃から、他の話も聞いてる?』

「和志の奥さんを傷つけてしまうから、しばらく三条家とは距離を置く話は聞いた」

『絢乃が、お前にそこまで話したのか……』

意外に思っていそうな言い方だ。

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