鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
たしかに絢乃は自分から悩みを口にしなそうだが、にわか夫では彼女の相談相手になれないと思われていた気がして眉根を寄せた。

「絢乃さんは変わらず忙しそうに過ごしてる。気持ちは切り替えているはずだ。もしなにかあっても俺が支えるから和志は心配しなくていい」

携帯の向こうで和志が黙った。

通話が切れたのかと思うほど間が空いてから、フッと笑い声がした。

『俺に嫉妬してどうするんだよ』

(嫉妬?)

恋愛感情ではなく、どちらが絢乃に近い存在かという点で張り合うなと言いたいのだろう。

思い返せば中学生の頃、くだらないことでよく和志と言い争った。

旧友だからか感情的になってしまい反省した。

「すまない。嫌な言い方をした」

『いや、嬉しいよ。絢乃のことをちゃんと考えてくれているのがわかって。なぁ、明日の仕事終わりに会わないか? 短時間でいい』

最近は身重の妻が心配でなるべく早めに帰っているそうだ。

それでも直接会って話したい事情があるようで、三十分だけという約束で明日の夜に会うことにした。

電話を切ったタイミングで、リビングのドアが静かに開いた。

涼しげな色合いのオフィススーツ姿の絢乃が入ってくる。

「昴さん、ただいま」

「おかえり」

「電話している様子だったけど、もう終わったの?」

「たった今。明日、友人と仕事終わりに会ってくるよ」

和志だとは言わない。

知らないところで自分の話をされるのは嫌だろうと思うからだ。

(隠したいわけではないが)

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