鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ナッツを口に放り込んだ和志が、人差し指でこめかみを掻いてチラッとこちらを見た。

「照れるだろ」

「お前に言ったわけじゃない」

「俺じゃないの!?」

冗談好きな友人はショックを受けたような顔をして見せ、直後に吹き出した。

呆れのため息をついてから、一緒に肩を揺らす。

「ありがとな。絢乃を好きになってくれて。お前なら絢乃の心を掴めると信じてる。いい夫婦になれるよ」

「そうだといいが」

「自信がないのか?」

「振り向かせ方がわからない。一緒に過ごす時間を増やして距離を縮めている最中だが、それでうまくいくだろうか?」

後ろで騒いでいた学生たちが急に静かになった。

ヒソヒソ声がすると思ったら、急に手を叩いて大笑いしている。

暴露大会でも始めたのだろうか。

「懐かしい盛り上がり方だな」

和志の意見に頷いた。

自分たちにもそういう若い頃があったので、もう少し静かにしてほしいと言えない。

斜め後ろから夜風が吹いた。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

新たな客が来店したようで腕時計に視線を落とすと、間もなく約束の三十分が経とうとしていた。

「出ようか」と腰を浮かせると「あと五分」と肩を押さえられた。

「攻めの気持ちでいけよ。弱気になる必要ないだろ。中学の時からモテまくっていたお前だぞ? バレンタインデーにはお前にチョコを渡したい女子の行列ができてたよな」

「そんな昔の話、忘れたよ」

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