鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
従兄と違ってそういう冗談を言いそうにないからこそ、不信感が芽生える。

ショックの波が引くと同時に怒りがこみ上げた。

「お客さん?」

戸惑っているようなマスターの声を無視してふたりに歩み寄ると、昴が振り向いた。

その目が大きく見開かれる。

「絢乃さん?」

「私にも聞かせてもらえる? 私を惚れさせるという恋愛ゲームの話を」

昴の焦り顔を初めて見た。

「違うんだ、今のは――」

「友人関係を隠していたんでしょ? ごまかさなくていいわよ。やっと腑に落ちたの。どうして昴さんが私との結婚を承諾したのかを」

ビジネスのメリットだけで伴侶を決めてしまえるものなのか、ずっと疑問だった。

彼の会社が傾いているのならともかく、経営は順調そのものなのにと。

おそらく和志が『妹をよろしく』とでも言ったのだろう。

共通の話題ができるから、今まで以上に友人と楽しく酒が飲めるという側面もありそうだ。

「そういう解釈でいいかしら?」

推測を口にして笑みを強めると、昴が眉根を寄せた。

彼が口を開く前に和志が立ち上がる。

「違う。昴とは十年以上、連絡を取っていなかったんだ。先月、たまたま会って、絢乃が俺の従妹だと初めて教えたんだよ」

「そうなの」

「信じろよ」

和志と視線をぶつけ合っていると、後ろからヒソヒソ声がする。

「なにあれ。修羅場?」

テーブル席の学生たちに興味を持たれてしまったようなので、話を切り上げる。

「お騒がせしました」

< 120 / 237 >

この作品をシェア

pagetop