鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
その他にも父の親友だという男性の家族三人を招待しており、その家の子は五歳の女の子だった。

『僕は昴。よろしくね』

『絢乃です。よろしくお願いします』

『お利口さんな挨拶だな。もっと普通でいいんだよ。絢乃ちゃんおいで、遊んであげるよ』

『お母さん、一緒に遊んできてもいい?』

母親が頷くのを見て、絢乃の顔がパッと花開く。

その眩しい笑顔に鼓動が跳ねた。

礼儀正しく、笑顔の可愛い子だというのが第一印象だ――。

「思い出せる?」

昴に探るような視線を向けられ、自分の記憶を覗いた。

(五歳の夏。那須の別荘と年上の男の子……)

白い外壁に緑の屋根のペンションのような建物がぼんやりと頭に浮かんだ。

幼い絢乃からすると背が高く、随分と年上に感じる少年たち。

たしか三人いた気がする。

ゆっくりと記憶が浮上し、おぼろげな少年の顔に今の昴が重なった。

子供の頃に会っていたとは気づかず少々驚いたが、父親同士が友人なのでそういうこともあるだろうと冷静に受け止める。

「なんとなく覚えているわ。たしかプールや花火で遊んだわよね。あの男の子は昴さんだったのね」

かろうじて思い出せた断片的な記憶を伝えると、昴が頷いて続きを話しだす。

「あの頃の俺は傲慢で見栄っ張りで、嫌なガキだった――」

父親の方針で自宅近くの公立校に通っていた。

校内で一番裕福な家庭環境だったのは間違いない。

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