鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
勉強もスポーツもできる方で女子から人気があり、服装や持ち物、休日のレジャー先などで男子には羨ましがられていた。

チヤホヤされると自分が特別な人間であるかのような気分になり、調子に乗っていたように思う。

別荘にクラスメイトふたりを招待したのも、すごいと言われたかったからだ。

狙い通り、『すげー!』とはしゃぐ友達に昴は得意になった。

『僕の別荘、広いから迷子に気をつけて。遊ぶ前にまずは案内してやるよ』

すると絢乃に声をかけられた。

『昴くんの別荘なの?』

『知らなかったの?』

『お父さんのお友達の別荘って聞いていたの。昴くんのお父さんのことよね?』

『だから僕の……あっ』

絢乃が言わんとしている意味がわかってハッとした。

所有者は昴ではなく父親なのに、『僕の別荘』と言ったから疑問に思ったようだ。

すごいと言われて鼻を高くしていいのは父親であって自分ではない。

そこに引っかかったということは、絢乃は裕福さを自分の手柄のように自慢しないのだろう。

濁りのない黒目に、気まずい自分の顔が映っていた。

注意や非難ではなく純粋な疑問として問いかけられたため余計に恥ずかしく、同時に自分の傲慢さに気づいた。

(僕が金持ちなわけじゃないのにえらそうに自慢して、最低じゃないか)

適当な言い訳をして逃げるようにその場を離れたが、絢乃の言葉は胸に刺さったままだった――。

「気づかせてくれてありがとう」

二十五年前の出来事のお礼を言われても、少しも覚えていない。

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