鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「友達の前で恥をかかされたと思わなかったの?」

五歳なら気遣えないのも仕方ないと思うが、そういう指摘はふたりきりの時にした方が相手のためだろう。

「恥をかいた原因は自分の傲慢さにあって、君にはないから。友達にはえらそうにして悪かったと謝ったよ。俺と違って絢乃さんは清らかで、そういう自慢をしたことがないだろ?」

誰しも子供の頃は、人より優れていることを自慢したがるものではないだろうか。

一般的にそうだと思ったが、振り返ってみると自分はあてはまらなかった。

幼稚園から中学までストレートに進学できる私立の名門校に通っていたので、クラスメイトたちも裕福な家庭の子女だ。家庭の財政状況は自慢にならない。

けれどもたとえ自分だけが裕福でも自慢しなかっただろう。

自分をすごいと思ったことがないからだ。

父親からはいつも努力不足を指摘され、成績でトップを維持していても褒められたことはない。

振り返ればいつも自信がなかったように思う。

もっと頑張らなければ人並にもなれないと思っていたくらいだ。

「私の場合は自信がなかっただけよ。昴さんはある意味、子供らしく育っていたんじゃないかしら。いいご両親だったのね」

「優しいフォローだな」

フッと目元を和らげた彼だが、反省は変わらないようだ。

「君が気づかせてくれなければ、いつ改心しただろうか。もしかすると今でも傲慢な性格だったかもしれない。そうならなくてよかったと思うんだ。ありがとう」

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