鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「森の中を探検して、夜はバーベキューに花火。楽しかったな」
彼の話に合わせて情景を頭に描く。
思い出せなくても実際に体験したことだからか、気持ちが徐々に弾みだす。
(懐かしいわ。昴さんは私に優しかった気がする。他のふたりの男の子たちよりも)
幼い絢乃が一緒にいるとやんちゃな遊び方はできない。
友達の少年ふたりは絢乃をのけ者にしようとしたが、昴が間に入ってみんなで楽しく遊べる方法を提案してくれたような記憶が残っていた。
ひとつ思い出すと、それに引きずられるように他のエピソードも蘇る。
「ねぇ、昴さんの友達に怖い話を聞かされて泣いた気がするの。途中であなたがやめろと言ってくれた。こんなことがなかったかしら?」
昴が目を見開いてから大きく頷いた。
「あったよ。明らかに作り話で、俺は怖いと思わなかったから止めるのが遅れたんだ。君を泣かせてすまなかった。そのせいで大変な目にも遭わせてしまったんだ。それも覚えてる?」
「あっ、祠」
「そう」
同じ記憶を持っているのが嬉しくなる。
「こんな出来事だったかしら――」
子供たちだけで別荘近くの森の中を探検していた時に、小さな石の祠を見つけた。
苔むしていて中に地蔵が祀ってあった。
かなり古いもののようで石の屋根の角は取れて丸みを帯び、地蔵の顔も風化して凹凸がなくなっていた。
すると少年のひとりが『のっぺらぼうだ』と言い、もうひとりが怪談話を始めた。