鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
『ここにはのっぺらぼうの女の妖怪が封じられているんだよ。でも月がきれいな夜は封印が弱まるから、妖怪が外に出て山をさ迷い歩く。運悪く出会ってしまったら、顔を奪われて自分がのっぺらぼうにされるんだ。友達のお母さんが、その妖怪に殺された。発見された時、顔がなくなってて血まみれだったんだって。友達、すごく泣いてた。それからこの山は……』

『おい、やめろって。絢乃ちゃんが怖がってるだろ』

昴の背中に隠れるようにして泣いていた。

彼に付き添われて別荘に戻ったあとは、母親のもとへ一直線。

のっぺらぼうが怖くて、けれども可哀想にも思った。

(人を襲うのは、お顔が欲しいからなのよね……)

滞在最後の夕食もバーベキューだった。

東京よりも夜空が美しい。

月は明るく輝いて、それを見ているとまた怖くなった。

祠の封印が弱まってのっぺらぼうが出てくるのが、月のきれいな夜だと聞いたからだ。

『お母さん、折り紙を持ってきてる?』

『スーツケースの中にあるけど、帰ってからでもできるわよ。今は昴くんたちと遊んだら?』

『折り紙がしたいの。お部屋に戻ってるね』

怖いから母親にくっついていたかったけれど、それをこらえて部屋に戻り折り紙をした。

のっぺらぼうのために。

(できたわ!)

キュロットパンツのポケットにそれを入れ、絢乃は懐中電灯を持った。

止められると思ったので誰にも言わずにそっと抜け出し、森の中を進む。

目指すは昼間に見た石の祠だ。

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